アレルギー性鼻炎について
遺伝や生活環境の影響で、年々患者数が増えているアレルギー性鼻炎は、吸い込んだ花粉やほこり、ダニなどの抗原が鼻の粘膜を刺激し、くしゃみや鼻水などの自律神経の反射を誘発します。こうした炎症反応が続くと粘膜がむくみ、鼻水や鼻詰まりも悪化します。
特に連日朝夜に鼻詰まりが続く場合は、内服薬だけの治療では不十分で、当院ではアレルギー学会のガイドラインに準拠し、原因の抗原の回避を基本にし、それでも発症してしまう場合は必要に応じて治療方法を選択していきます。長年にわたり内服治療を続けていても症状が気になる場合は、原因抗原の十分な回避と適切な治療方法が選択されていないことが多くあり、減感作治療やレーザーなどの外科治療が有効です。
当院は20年以上の特異的免疫療法の実績があります。内服薬や点鼻薬を使わずに症状を制御できるよう改善した例もあり、その有効率は約60%です。現在では舌の裏側に溶ける錠剤を数分含んで最後に飲み込むという舌下免疫療法を行っています。従来の注射による(皮下)免疫療法と比較し、通院回数が少なく、安全で効果も確実な舌下免疫療法は患者さまにも好評です。
鼻粘膜のレーザー治療は軽度~中等症で季節性の鼻詰まりの改善には有効です。しかし、1年中症状の続く方や重症の方では、数年すると再び鼻詰まりが悪化するため鼻内の下甲介切除手術が適応されます。コブレーション粘膜蒸散という方法で下甲介切除を日帰りで行います。
また、通常の鼻詰まりを治す鼻の骨の出っ張りと鼻中隔の曲りを直す手術と、鼻水を減らすための後鼻神経下甲介枝凝固術という手術は1泊2日の短期入院で行っています。アレルギー性鼻炎は症状に応じて適切に治療方法を組み合わせることで、毎日を快適に過ごすことが可能です。ぜひアレルギー専門医にご相談ください。
アレルギー鼻炎の症状
風邪とは違い発熱、筋肉痛、関節痛といった症状は基本的にありません。ほこり・ダニなどによる通年性アレルギーの主な症状は、発作性のくしゃみ・鼻水・鼻詰まりで、花粉症では目、耳、のどのかゆみや皮膚があれる、頭が重いといった症状が出る場合もあります。
保存的治療
抗原の除去
治療より予防に近いものですが、症状を抑えるのには大事なことです。週に1~2回は室内を掃除し、湿度を約50%、温度を20~25℃に保つようにします。また、織物のソファー、じゅうたん、畳はできるだけ避け、ベッドのマット、ふとん、枕に防ダニカバーをかけます。
減感作療法(免疫療法)
段階的に量を増やしながら原因の抗原を体に投与するため、週1~2回の注射を半年から1年間続ける必要がありますが、体質改善が見込める唯一の根本的な治療方法です。有効率は70%前後とされています。ただ、複数の抗原にアレルギーがある場合は施行困難で、皮膚の発赤や痒みなど局所の副作用以外に、全身性のショックなどの副作用が起こる可能性もあるといった問題もあります。
薬物療法
抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
最も一般的に使用されている薬剤で、長期投与の安全性も確認されています。ただ、効果が出るまで1週間ほどかかることがあり、眠気、集中力の低下、のどの渇きなどの副作用が出ることもあります。
血管収縮剤
特に鼻詰まりによく効き、多くの市販の点鼻薬に含まれている成分です。速効性があります。ただ、長期的な使用によって、薬が効きにくい薬物性鼻炎と呼ばれる高度の粘膜の腫れが起こる可能性があり、血管収縮剤自体の効き目や効果の持続性もなくなってくるため、短期間の使用をすすめています。
ステロイド点鼻薬
効果が強く、効きが早いのが特徴です。副腎皮質ホルモンを含み、人によっては点鼻そのものの刺激が副作用を引き起こすこともありますが、多くは粘膜で吸収されるので、大きな副作用はほぼないと考えられています。
手術的治療
手術で体質そのものは変えられませんので、体質的疾患のアレルギー性鼻炎が「手術で治る」という表現は厳密には誤りです。しかし、鼻粘膜に対する様々な手術でアレルギー反応が起きにくい粘膜、症状が起きにくい粘膜に変えることはある程度可能です。
炭酸ガスレーザーやアルゴン凝固術といったレーザー手術で粘膜を焼く治療が代表的で、この手術を受けた患者さまの約8割が日常生活でアレルギー反応による支障を感じなくなり、7年以上その効果が持続される方も半分以上を占めます。もし症状が再発しても多くは再手術で再び抑制できます。
また、これらの手術が適さない方や効かない患者さまには、鼻腔構造を改善する手術とアレルギー反応に関わる神経を切断する手術も同時に行えます。この鼻神経切断手術・粘膜下下鼻甲介骨切除術といった手術は、9割以上の患者さまに有効で、3年間効果の持続が期待できます。
どの手術が適しているかは患者さまによって異なり、相応の知識と経験が判断には要求されます。どの手術方法でも効果が期待できない方もいますので、専門性の高い医療機関を受診し、それぞれの手術のメリット・デメリットをよく検討しましょう。