アレルギー性鼻炎(花粉症)
アレルギー症状を引き起こすアレルゲンを吸入し、鼻の粘膜で抗原と抗体が反応して引き起こされる鼻症状です。通年性のアレルギー性鼻炎のアレルゲンには家の埃やダニの糞・死骸などのほか、ペットのフケやカビが挙げられます。風邪とは異なり、アレルギー性鼻炎によるのどの痛みや熱はありません。
症状
くしゃみ・鼻水・鼻詰まりが3大症状で、主として鼻と目に症状が現れます。
検査
問診、鼻鏡検査、血液・鼻汁好酸球検査などで鼻炎の症状がアレルギー性と認められた場合、アレルゲンまで特定します。
治療
アレルギー性鼻炎の症状を軽減するには、アレルゲンの回避が第一です。その上で抗アレルギー薬の内服や鼻スプレーを使い症状を抑制します。
花粉症
季節性のアレルギー性鼻炎の一種である花粉症は、植物の花粉が原因となり症状が引き起こされます。特によく知られているスギやヒノキの花粉のほか、シラカンバ、ハンノキ、カモガヤ、イネ、ブタクサ、ヨモギなどの種類があります。
症状
目の痒み・異物感・充血、涙、立て続けのくしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどの症状が現れます。さらには咳、のどや皮膚の痒み、頭痛、倦怠感、微熱、不眠、下痢、体や顔のほてり、イライラ感なども生じ、心身のダメージにより意欲や生活の質(QOL)が大きく損なわれることもあります。
検査
問診や鼻鏡検査に加え、血液検査でアレルゲンを特定します。
治療
アレルゲンを近づけない環境整備による抗原回避と、薬物療法を中心に進めます。また、慢性的な鼻詰まりでお悩みの患者さまには、アレルギーへの過剰反応を鈍らせるためのレーザー治療などもあります。
内服薬
鼻水、くしゃみの症状が特に強く現れる患者さまに効果的です。症状が出てから薬を飲み始めるよりも、花粉の飛散が始まる2週間前から飲み始めると、さらに症状が緩和されることが多いといったデータもあります。
鼻スプレー
鼻詰まりなどの症状が重い患者さまには、内服薬に加えて局所スプレーを併用します。副作用が少ない上、花粉症治療に大きな効果が期待できます。
副鼻腔炎
風邪の症状が現れて約1週間で、細菌感染が鼻の副鼻腔に起こり、炎症を発症する病気です。
症状
絶えず出てくる鼻水やいびき、頭痛のほか、鼻詰まりで常に口呼吸をしておりにおいがわからないといった症状が主です。
検査
鼻鏡検査・内視鏡検査、X線検査、細菌検査などが行われます。
治療
薬物療法や排膿洗浄、抗生剤の入ったネブライザー(吸入器)などを使用し、これらの治療でも改善しない場合は手術を行うケースもあります。排膿洗浄は鼻から上顎洞に特殊な針を刺して副鼻腔に溜まった膿を吸引した後、副鼻腔を生理食塩水などで洗浄するものです。
嗅覚障害
鼻がつまっているわけでもないのに、鼻が利かなくなる疾患です。
症状
においが感じなくなります。
検査
問診、内視鏡検査、画像検査などで原因を調べ、嗅覚検査などで嗅覚障害の程度を調べます。
治療
嗅覚障害は原因によって、呼吸性、嗅粘膜性、中枢性、呼吸性と嗅粘膜性が同時に発症した混合性の4つに分類でき、それぞれ治療法が異なります。
おいの分子が嗅粘膜というセンサーまで届かない状態の呼吸性は、鼻詰まりやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの治療で嗅覚はすぐ復活します。嗅覚障害の原因として多いのが、約4割を占めるとも言われる慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で、この場合は呼吸性の障害が多く、手術で鼻の換気が改善すれば、においの感覚も回復します。
風邪ウイルスなどにより嗅粘膜自体に障害が生じた状態が嗅粘膜性で、治療は主に神経を活性化させるためのステロイド剤の点鼻や、神経を活性化させるビタミンB剤といった薬物を用いますが、回復しない場合もあります。頭部外傷などによる神経損傷が原因となる中枢性は、現在、有効な治療法が見つかっていません。
鼻中隔弯曲症
鼻の穴を左右に分ける仕切り(鼻中隔)が、大きく歪んだ状態です。
症状
鼻づまりやいびきが出て、匂いが鈍くなります。時には、頭痛、肩こり、注意力減退、鼻血の原因となることもあります。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎があると、その症状はさらに悪化します。
検査
鼻の内視鏡検査で鼻中隔の歪みはすぐに診断できます。鼻副鼻腔CT検査は、鼻腔全体に対する歪みの程度や、左右の不均衡を確認するのに有用です。
治療
鼻づまりが重い場合は、歪んだ鼻中隔の軟骨や骨を除去し、左右均等になるように矯正します。これを鼻中隔矯正手術と呼びます。手術は局所麻酔で行いますが、当院では鼻中隔をしっかりと支えて、出血防止に効果のあるシリコン板を両側鼻内に縫合圧着固定しています。手術後の鼻内タンポン挿入は最低限に減量し、全例で1泊2日または短期滞在手術が可能です。
鼻血
特に鼻腔からの出血のことで、正式には鼻出血と称されます。
検査
耳鼻咽喉科では鼻腔用ファイバーなども用いて鼻の中をよく観察し、どこから出血しているのか出血部位を確認します。血液検査などを行う場合もあります。
止血方法
鼻血の止血は親指と人差し指で小鼻をつまんで圧迫するのが、簡単かつ効果的です。大半の鼻血はキーゼルバッハ部位から出血します。鼻に指を少し入れた時に指先が内側(鼻中隔)に触れる部分で、薄い粘膜でできている上、網の目のようにたくさんの毛細血管が走るため、ちょっとした傷でも出血します。
鼻血が命に関わるようなことは滅多にありませんが、成人の鼻血では脳梗塞や心筋梗塞などの危険因子でもある高血圧が原因であることが多く、出血がなかなか止まらない場合や大量な場合、頻繁に繰り返すなどの場合は耳鼻咽喉科を受診してください。